「バッテリレス漏水センサ」で進めるテレワーク時代の遠隔水害対策

TechanaLye2020-10-29
株式会社テカナリエ

わずかの水滴も見逃さず検知し、その場所を特定してBLE(Bluetooth low energy®)で無線通知。それら一連の動作を電池無しで実現するのが、エイブリック株式会社のエナジーハーベスト技術CLEAN-Boostを使った「バッテリレス漏水センサ」だ。リボン状の漏水センサと無線タグ部から成り、センサリボンに織り込まれた金属電極に水が触れると微弱な電力が発生。それを蓄積して昇圧し、BLEモジュールを駆動させて、無線で外部に漏水を知らせる。

新たな電源確保や配線工事などが不要なこのセンサは、水を避けねばならないあらゆる場所での活躍が期待できる。漏水時には他社製品のようなブザーやランプの代わりに無線で通知してくれることから、床下や天井裏、地中や密閉された空間など、通常人の目や耳の届かない場所、立ち入りが難しい場所での利用も可能だ。

図1 人の目や耳が届かないところで活躍する「バッテリレス漏水センサ」
図1 人の目や耳が届かないところで活躍する「バッテリレス漏水センサ」

 

一方で、さらなる活用に向けては、考慮すべき課題もある。1つは、センサリボンがわずかな水にも反応して発電するため、少しでも濡れてしまうと交換する必要があることだ。このセンサリボンが適切に交換され、常に正しく動作する仕組みを用意する必要がある。2つめは、通知範囲が限られるBLEによる無線通信の更なる機能拡充だ。漏水発生時に、ユーザーがどこにいてもタイムリーに通知できる仕組みがあれば、より利便性は向上する。

図2 「バッテリレス漏水センサ」の2つの課題
図2 「バッテリレス漏水センサ」の2つの課題

 

消耗品の交換時期は、顧客と企業が情報交換できる貴重なタイミングでもある。顧客にセンサリボン交換の要否を確認すると同時に、交換が必要な場所と不要な場所まで確認することができれば、その顧客環境での漏水の発生傾向を把握することができる。そうしたデータが収集できれば、センサリボンの効果的な設置方法を検討し、新たな提案を行うことも可能になるほか、同様な設備を持つ顧客への助言も可能になる。

こうした顧客との情報交換を効果的に行う仕組みとして、サブスクリプション型のサービスも有効だ。顧客が定額料金を支払うことで、一定期間ごとに顧客環境の漏水状態を確認しながら情報交換を行い、センサリボンも適切な時期に交換できる。こうした活動で得られた多くのフィードバックは、今後の製品展開に向けても大きな財産となる。

図3 「バッテリレス漏水センサ」サブスクリプションプラン
図3 「バッテリレス漏水センサ」サブスクリプションプラン

 

次に無線通信の通知範囲が限られる点については、BLEからの信号を、BLEゲートウェイを介してクラウド側に送信し、漏水発生時には、発生場所、発生時刻情報とともにユーザーに自動的に通報できるシステムが実現できれば、使い勝手も格段に向上する。

図4 「バッテリレス漏水センサ」による設備の遠隔監視
図4 「バッテリレス漏水センサ」による設備の遠隔監視

昨今、日本をはじめ世界中で、巨大台風や集中豪雨による洪水が多発し、以前にも増して水害対策が必要な時代となってきた。また、昨今のコロナ禍によりテレワークなどが常態化するなか、遠隔からの設備監視に対する需要は急増している。

上記のサービス、システムが追加されることで、「バッテリレス漏水センサ」の利便性や費用対効果が上がれば、アフターコロナ時代の世界がこぞって求める遠隔水害対策システムになるだろう。

 

 

執筆:株式会社テカナリエ
“Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語が会社名。年間300のエレクトロニクス製品分解、解析結果を基に、システム構造やトレンド解説、市場理解の推進を行っている。

 

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