1. 実際のワイヤレス給電回路はどんなもの?

給電側回路とその電力を受け取る受電側回路を組み合わせることで、手軽にワイヤレス給電を実現できます。
受電側回路には定電圧出力が可能な回路と、小型リチウムイオン二次電池の充電機能を備えた回路の2つがあります。

給電側回路 : 構成

給電側の回路を図1に示します。これはUSB電源より供給するシステムを想定しています。そのため、昇圧回路、給電回路、レギュレータ回路の3つで構成しています。

  • 昇圧回路:
    5Vの電源を昇圧し、給電に必要な9Vの電圧を作るために使用しています。
  • 給電回路:
    給電IC (S-8474) によって給電側コイルの共振を制御しています。
  • レギュレータ回路:
    給電IC (S-8474) に安定した電源を供給するために使用しています。
図1 給電側回路の全体構成
図1 給電側回路の全体構成

給電側回路 : 基板サイズ

図2 給電側回路 : 基板サイズ
図2 給電側回路 : 基板サイズ

図2に示すようにわずか17.5mm × 14.5mmの大きさの基板に給電コイルとNTCサーミスタを外付けするだけで、給電回路全体を構成することが可能です。

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S-8474シリーズ デモボードユーザーズマニュアル

受電側回路 : 構成

受電側の回路は図3に示すように、ICは受電IC (S-8471) を1つだけ使用する非常にシンプルな構成です。
図1の給電側コイルと図3の受電側コイルを適切な距離で重ね合わせ、磁気結合させることで、受電回路の出力端子から5Vを定電圧出力します。

図3 受電側回路の全体構成
図3 受電側回路の全体構成

受電側回路 : 基板サイズ

図4 受電側回路 : 基板サイズ (S-8471使用)
図4 受電側回路 : 基板サイズ (S-8471使用)

図4に示すように受電回路は部品点数が少なく、より小型な8mm角の大きさの基板に受電コイルとNTCサーミスタを外付けするだけで、受電回路全体を構成することが可能です。

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充電機能を備えた受電側回路 : 構成

図5の受電回路は小型リチウムイオン二次電池の充電機能を備えた回路です。
この受電回路もICは受電IC (S-8473) を1つだけ使用する非常にシンプルな構成です。
図1の給電側コイルと図5の受電側コイルを適切な距離で重ね合わせ、磁気結合させることで、受電回路の出力端子に接続された小型リチウムイオン二次電池への充電制御が行われます。

図5 小型リチウムイオン二次電池の充電機能を備えた受電側回路の全体構成
図5 小型リチウムイオン二次電池の充電機能を備えた受電側回路の全体構成

充電機能を備えた受電側回路 : 基板サイズ

図6 受電側回路 : 基板サイズ (S-8473使用)
図6 受電側回路 : 基板サイズ (S-8473使用)

小型リチウムイオン二次電池への充電電流は比較的小さいため、部品の小型化が可能になり、図6に示すように10mm角の大きさの基板に受電コイルとNTCサーミスタと小型リチウムイオン二次電池を外付けするだけで、充電機能を備えた受電回路全体を構成することが可能です。

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2. 小型のワイヤレス給電はどの程度の実力なの?

スペック、機能

エイブリックで推奨する給電側コイル (φ20mm)、受電側コイル (φ15mm) を使用した場合、3mmのコイル間距離でワイヤレス給電を行うことが可能です。
このとき、図3の受電回路の定電圧出力5Vの最大負荷電流は100mA程度になります。
また、図5の充電機能を備えた受電回路は、小型のリチウムイオン二次電池に33mAの定電流充電を行い、満充電に近づくに従い充電電流を段階的に下げる制御を行います。
エイブリックのワイヤレス給電ICは給電側、受電側にそれぞれNTCサーミスタを外付けすることで温度保護機能を使用することができます。
また、給電IC (S-8474)、受電IC (S-8473) には温度保護や充電動作などをLEDで示す状態表示機能を備えています。

ワイヤレス給電時の効率

図7 ワイヤレス給電時の効率 (推奨コイルによるコイル間距離3mm)
図7 ワイヤレス給電時の効率 (推奨コイルによるコイル間距離3mm)

給電側回路の昇圧回路とレギュレータ回路は使用せず、外部電源を用いた場合の給電制御IC (S-8474) と受電制御IC (S-8471) のワイヤレス給電時の効率を図7に示します。
受電側回路の出力電流 (IOUT) が90mA以上で効率は50%を超えます。

充電機能を備えた受電制御IC (S-8473) の充電特性

図8 ワイヤレス給電時の充電特性 (推奨コイルによるコイル間距離3mm)
図8 ワイヤレス給電時の充電特性 (推奨コイルによるコイル間距離3mm)

図8に給電制御IC (S-8474) と小型リチウムイオン二次電池の充電機能を備えた受電制御IC (S-8473) のワイヤレス給電時の充電特性を示します。
この充電特性は小型リチウムイオン二次電池の代用として、電気二重層コンデンサを使用した例です。
定電流充電により、電池電圧 (VBAT) が徐々に上昇し満充電に近づくと充電電流 (IBAT) が段階的に下がる制御を行い、充電が完了します。

3. ワイヤレス給電の実験動画を見てみよう

給電距離

下は給電側コイルと受電側コイルの距離を2mmから7mmまで垂直方向に変化させたときの受電動作の動画です。
コイル間距離が7mmの場合にLEDがチラツキはじめ、受電動作範囲から遠ざかったことが分かります。

(再生時間: 1分35秒)

複数の受電ユニットに同時給電する実例

1つの給電ICで、複数個の受電モジュールに給電することが可能な例をご紹介します。
動画では給電側コイルの上に受電モジュールを並べていくたびに給電側の入力電流が増し、受電モジュールのLEDが点灯していく様子が分かります。

(再生時間: 1分10秒)