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間欠動作とは?

IoT通信機器、監視機器の消費電力を大幅に低減させる方法の一つである「間欠動作」。
ここでは、間欠動作と消費電流の関係と、より低消費に間欠動作を実現できる回路例を紹介します。

 

1. 間欠動作とは

間欠動作という言葉にはあまりなじみがないかもしれませんが、間欠動作自体は私たちの身近なものに広く使われている技術です。

「間欠」には、間欠ワイパーや間欠泉がそうであるように、「一定の時間において、物事が起こったりやんだりする」という意味があります。 「間欠動作」とは、電気制御の分野において多く用いられる言葉です。システムの動作制御のひとつで、定期的に通常動作とスタンバイ動作を繰り返す制御方法を指します。

例えば、電池で動く機器やエナジーハーベスティング機器など、電力に限りがあるシステムの場合、常に通常動作をしていると消費電流が大きくなり、電力を維持できなくなることがあります。
そのため、これらの機器の多くは、定期的にシステムをスタンバイ動作に切り替える「間欠動作」を採用し、消費電流を低減させ、電力を有効に活用しています。間欠動作イメージ間欠動作は、定期的にスタンバイ動作に切り替えても成立するシステム(IoT通信機器、監視機器)の消費電力を低減させる手段として、非常に有効といえます。

 

2. 間欠動作の消費電流

ここでは、間欠動作と消費電流の関係を具体的に見ていきます。

間欠動作では、下記のようにシステムが通常動作とスタンバイ動作を繰り返すため、平均消費電流を低減することができます。間欠動作時の消費電流グラフ

IOPE=通常動作時消費電流 
 ISTANDBY=スタンバイ動作時消費電流 
IAVE=平均消費電流 
TOPE=通常動作時間
 TSTANDBY=スタンバイ動作時間

平均消費電流IAVEは、以下の計算式で算出することができます。

IAVE

IOPE × TOPE + ISTANDBY × TSTANDBY

TOPE + TSTANDBY

 

例えば、IOPE=10mA、ISTANDBY=10μA(=0.01mA)で1秒間に1回0.1秒だけ通常動作する間欠動作(TOPE=0.1sec、TSTANDBY=0.9sec)の場合、

IAVE

10mA × 0.1sec + 10μA × 0.9sec

0.1sec + 0.9sec

= 1.009mA ≒ 1mA

となり、通常動作時の消費電流10mAに対し、間欠動作を行うことで約1/10に消費電流を低減することができます。このように、スタンバイ動作の時間割合が大きい間欠動作ほど、効果的にシステムの消費電流を低減することができます。

 

3. 間欠動作の使用例 
―①MCUを用いた回路例

間欠動作において、システム全体の通常動作/スタンバイ動作を切り替えるトリガーとして使われるのは、多くの場合マイコン(MCU)*です。

*マイコン・・・電子機器を制御するための小型コンピュータ。電子機器の頭脳として、入力された信号に応じ働く。

MCUを用いた間欠動作の回路例

システムをスタンバイ動作から通常動作に切り替える周期をMCUにプログラムしておけば、MCUでシステムの間欠動作を制御することができます。

MCUを用いた間欠動作例と消費電流

例えば、IOPE=10mA、LDOのISTANDBY=5μA、MCUのISTANDBY(Sleep mode時)=5μAで、
1時間に1回0.1秒だけ通常動作する間欠動作(TOPE=0.1sec、TSTANDBY=3599.9sec)すると

IAVE

10mA × 0.1sec + (5μA + 5μA) × 3599.9sec

0.1sec + 3599.9sec

= 10.3μA ≒ 10μA

となります。
この場合、次の図のように、平均電流IAVEをスタンバイ動作時の消費電流ISTADNBYとほぼ同じ程度にまで低減することができます。MCUを用いた間欠動作の消費電流

 

4.間欠動作の使用例
―②タイマICを用いた超低消費な回路例

3で紹介した例より、更に消費電流を低減したい場合は、

  • 低消費のLDOを選ぶ
  • 低消費のSleep modeのMCUを選ぶ

ことが手段として考えられますが、

  • MCUを完全にOFFして、低消費のタイマICをウェイクアップトリガとして使用する

という方法も効果的です。

図のように、LDOとMCUの間にスイッチを配置し、あらかじめ定期的にウェイクアップするよう設定したタイマICでMCUへ電源供給するスイッチのON/OFFを制御します。

MCUを用いた間欠動作の回路例

一般的に、このようなタイマICの消費電流はMCUのSleep mode時の消費電流と比べると少ないため、平均消費電流を更に低減することができます。

タイマICを用いた間欠動作例と消費電流

では、タイマICを用いた場合の平均消費電流を計算してみます。
タイマICにS-35710を用いた場合で考えてみましょう。

IOPE=10mA、LDOのISTANDBY=5uAとします。MCUはSleep modeではなく、電源供給を遮断することで完全OFFに切り替えることが可能なためMCUのISTANDBY=0uAとなります。
タイマIC S-35710のISTANDBY=0.2uA、1時間に1回0.1秒だけ通常動作する間欠動作(TOPE=0.1sec、TSTANDBY=3599.9sec)の場合、

IAVE

10mA × 0.1sec + (5μA + 0.2μA) × 3599.9sec

0.1sec + 3599.9sec

= 5.5μA

となり、「3.間欠動作の使用例 ①MCUを用いた回路例」で紹介したMCUのSleep modeを使用した間欠動作の場合と比較すると、平均消費電流を約半分にすることが可能となります。

タイマICを用いた間欠動作の消費電流

 

5. 間欠動作に適したICの選び方

ここまでで紹介したように、間欠動作で消費電流を低減するには

  • Sleep mode時の消費電流が低いMCUを使用する
  • スタンバイ動作時にMCUを完全OFFにできる、低消費のタイマICをウェイクアップトリガとして使用する。
  • スタンバイ動作時・通常動作時も常に動作するLDOは、低消費なものを使用する

と効果が得られるでしょう。

 

エイブリックのICが極低消費の間欠動作をサポート


エイブリックは、間欠動作の実現をサポートするタイマICとLDOをラインナップしています。
特に、ウェイクアップタイマIC S-35710C01とLDO S-1318を使用すると、システムの消費電流を大幅に低減することができます。

S-35710C01の消費電流は0.2uA、S-1318の消費電流は0.095uAのため、 「4.間欠動作の使用例①」で説明した条件*の場合、

*1時間に1回0.1秒だけ通常動作する間欠動作(TOPE=0.1sec、TSTANDBY =3599.9sec)の場合

IAVE

10mA × 0.1sec + (0.095μA + 0.2μA) × 3599.9sec

0.1sec + 3599.9sec

= 0.57μA

となり、極低消費の間欠動作が可能になります。タイマーICとLDO(S-1318)を用いた間欠動作の消費電流

他にも、エイブリックは、間欠動作をサポートする低消費電力で柔軟な時間の設定が可能なウェイクアップタイマIC、インターバルタイマICをラインナップしています。 IoT通信機器、監視機器、セキュリティ機器などの幅広い電池駆動システムやエナジーハーベスティングシステムの開発をサポートします。

機器の低消費化を間欠動作で実現される際には、エイブリックの製品も是非ご検討ください。

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