リニアレギュレータ(LDOレギュレータ)

リニアレギュレータの動作原理と構成

1. リニアレギュレータの動作原理

ここでは、リニアレギュレータの動作原理を説明します。次の図は、リニアレギュレータを簡略化したモデルです。

リニアレギュレータは、制御素子の抵抗(RON)を 調整することにより、入力電圧(VIN)や負荷( RL)が変化しても出力電圧( VOUT)を一定に保つことができます。 内部構成と制御の詳細については 「2.リニアレギュレータの内部構成」で説明します。

・熱損失とは?

このモデルを用いて、リニアレギュレータの動作時に必ず発生する「熱損失」についても考えてみましょう。入力電圧(VIN)=3.0V、出力電圧( VOUT)=1.0V、出力電流( IOUT)= 100mAとします。

この場合、リニアレギュレータの入力側の電力は約 0.3W、出力側の電力は 0.1Wになり、入力側と出力側の電力に差分が約0.2W生じることがわかります。

この差分はリニアレギュレータの「熱損失」と言われ、 大半は制御素子の発熱として、残りは リニアレギュレータの自己消費電流として消費されます。 入力電圧と出力電圧の差(=入出力電圧差)が大きいほど、負荷電流が大きいほど、熱損失は大きくなります。

このため、リニアレギュレータを使用する際は熱設計を行う必要があります。
熱設計を行う際に重要になるのがICの許容損失です。ICの許容損失とは、熱損失の許容値を指します。
許容損失を超える条件でICを使用すると、ICの保証動作温度上限を超えてしまいます。

エイブリックでは、お客様のご使用条件と弊社電源ICを用いた際の熱設計をサポートするため、"熱シミュレーションサービス" を提供しております。この熱シミュレーションサービスをご活用いただくことで、お客様の開発段階での熱設計におけるリスクの低減に貢献いたします。
熱シミュレーションサービスの実施については販売窓口までお問い合わせください。

2. リニアレギュレータの内部構成

もうすこし詳しく、リニアレギュレータの内部構成を見ていきましょう。

ボルテージレギュレータの内部構成


1. 出力ドライバ

入力電圧(VIN)から出力電圧(VOUT)側に流れる電流は、出力ドライバを経由します。
そのため、リニアレギュレータの熱損失の大半はこの出力ドライバ部分で発生します。

優れた出力ドライバ、つまりオン抵抗が低い出力ドライバを使用すると、高出力電流であっても低入力電圧で所望の出力電圧を得ることができるため、熱損失を抑えることができます。
入出力電圧差(Dropout)が小さくても所望の出力電圧を得ることができるリニアレギュレータをLDO(Low Drop Out)レギュレータと呼びます。


2. 基準電圧回路

基準電圧回路は、出力電圧(VOUT)が所望の値より高い/低いを判定するうえで基準になる電圧(=基準電圧、VREF)をエラーアンプへと出力します。

出力電圧の判定基準となるため、ブレないことが重要です。入力電圧や温度など、周辺環境が変化しても一定の電圧を出力することが求められます。


3. 帰還抵抗

帰還抵抗は、出力端子と接地(GND) の間に接続され、出力電圧(VOUT) を抵抗RFとRS で分圧した電圧(VFB)をエラーアンプに出力します。

帰還抵抗には、出力電圧(VOUT)を所望の割合で分圧した電圧(VFB)をエラーアンプに出力することが求められます。判定基準(VREF)が一定でも、判定対象の状態認識(VFB)が正しくなければ、エラーアンプでの判定が正しく行われません。


4. エラーアンプ(誤差増幅器)

エラーアンプは、基準電圧回路から出力される基準電圧(VREF)と、帰還抵抗で分圧された帰還電圧(VFB)を比較して、出力電圧(VOUT) が所望の電圧になるように出力ドライバのオン抵抗を制御します。
VOUT が所望の値より高い場合(VREF < VFB)、エラーアンプは出力ドライバのオン抵抗を上げ、VOUT が所望の値より低い場合(VREF > VFB)、エラーアンプは出力ドライバのオン抵抗を下げるように制御します。

エラーアンプの詳細はオペアンプとは?をご参照ください。

> 「LDOとは?リニアレギュレータとは?」

エイブリックのリニアレギュレータのご紹介