電圧リファレンスとは?
1. 電圧リファレンスとは?
電圧リファレンスの役割と種類
電子機器やセンサ機器は、電圧、電流、温度、位置などといったアナログ値を観測し、そのアナログ値を電圧値に変換して動作します。
電圧によって制御を行うためには、観測して得られた電圧とは別に基準となる電圧が必要となります。この電圧は、例えばセンサが出力したアナログ電圧を正確に比較したり、デジタル信号変換をしたりするための基準として使われます。
この基準となる電圧を生成するのが電圧リファレンスで、測定の精度を保つために欠かせない、土台となる部品です。
電圧リファレンスは、一定の出力電圧を維持することが可能なリニアレギュレータの一種です。同じリニアレギュレータであるLDOと比較すると、主に以下の違いがあります。
| 種類 | 主な用途 | 出力電圧精度 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 電圧リファレンス | アプリケーションの基準電圧 | 高い | 電源電圧や環境温度が変動しても、高精度を維持可能 |
| LDO | アプリケーションの電源電圧 | 一般的 | 大電流供給が可能、高効率 |
電圧リファレンスは、以下の図のように高精度が求められるA/Dコンバータ (ADC) やコンパレータ、センサ等の基準電圧として幅広く利用されています。
電圧リファレンスの特徴
ここからは電圧リファレンスの特徴を紹介します。
出力電圧精度が高い
電圧リファレンスは、高精度な出力電圧を維持することができます。
例として、電源電圧として使用されるLDOの出力精度は±1.5%程度ですが、電圧リファレンスの出力精度は±0.1%程度と非常に高精度です。
温度変化による出力電圧の変動が小さい
LDOや電圧リファレンスの出力電圧は、周囲の環境温度の影響を受けて変動します。これを出力電圧の温度特性と言い、温度変化による出力電圧の変化量を出力電圧温度係数という指標で表します。
電圧リファレンスの出力電圧温度係数は、一般的にppm/°Cという単位で示されます。1ppmは100万分の1の比率を表し、1ppm = 0.0001%です。例えば、1Vの基準電圧の出力電圧温度係数が10ppm/°Cの場合、1°Cあたりの出力電圧の変化量は、1V × 10ppm/°C × 1°C = 10μVのように計算することができます。
例として電圧リファレンスとLDOの温度特性グラフを示します。
Butterfly法を用いて算出した温度係数 (-40°C ~ +125°C) は、電圧リファレンスが50ppm/°C、LDOが100ppm/°Cであり、電圧リファレンスは全温度範囲に渡り、優れた出力電圧精度を持ちます。
低ノイズ
LDOや電圧リファレンスの出力電圧を電圧計で見ると一定ですが、オシロスコープでよく観察するとランダムな電圧変動を繰り返していることに気づきます。この電圧変動が出力ノイズです。
電圧リファレンスの出力ノイズは、LDOと比較して小さいという特徴があり、電圧リファレンスの重要な指標となります。
一般的なLDOが約100μVRMS (10Hz ~ 10kHzの帯域) 程度であるのに対し、電圧リファレンスの出力ノイズは、数μVRMSから数十μVRMS (同帯域) と非常に小さく抑えられています。
この優れた低ノイズ特性は、A/Dコンバータや、高精度シグナルチェーンなどの性能を最大限に引き出すために重要です。
このように、電圧リファレンスには優れた特性がありますが、エイブリックのシャント電圧リファレンスもその一種です。次章では、その具体的な動作原理を解説します。
2. シャント電圧リファレンスの動作原理
シャント電圧リファレンスの動作原理と構成
右図はシャント電圧リファレンスと、周辺回路を接続した簡易回路図です。
シャント電圧リファレンスは、CATHODE端子とANODE端子の2つの端子を有します。CATHODE端子にシャント抵抗R1を接続し、R1の他端には入力電圧VINが印加されます。CATHODE端子からは出力電圧VOUTが出力され、他のアプリケーションへと接続されます。
電流の流れ
シャント抵抗R1には入力電流IINが流れます。IINは電圧リファレンスに流れるシャント電流 (ISHUNT) と、他アプリケーションに流れる負荷電流 (ILOAD) を合計したものです。
VINが一定の場合、ILOADに流れる量が変化しても、電圧リファレンスの定電圧動作によりISHUNTが逆の変化をすることでIINが一定になるように制御されます。この動作により出力電圧の式は、
VOUT = VIN - IIN × R1
= VIN - (ILOAD + ISHUNT) × R1
となり、VOUTが所定の基準電圧となるようにシャント抵抗R1を設定することで、広範囲のVINからでも基準電圧を生成することができます。
シャント電圧リファレンスの内部構成
右図はシャント電圧リファレンスの内部構成を表した簡易ブロック図です。
シャント電圧リファレンスの内部は、主に基準電圧、誤差増幅器 (エラーアンプ)、帰還抵抗、出力トランジスタなどで構成されています。
誤差増幅器は、CATHODE端子の電圧であるVOUTを帰還抵抗 (RfbとRss) によって分圧した帰還電圧 (Vfb) と基準電圧 (Vref) を比較します。誤差増幅器が出力トランジスタを制御することにより、ISHUNTを調整し、VOUTを一定に保つように定電圧動作をします。
定電圧動作のメカニズム
例えば、VOUT (CATHODE) に接続された負荷電流 (ILOAD) が増加してVOUTが低下すると、RfbとRssによる分圧電圧Vfbも低下します。すると、誤差増幅器が出力トランジスタに流すISHUNTを減少させることで、VOUTが上昇するように制御されます。これにより、常に一定のVOUTを出力することができます。
ツェナーダイオードとの比較
CATHODE - ANODE間の電圧が特定の値を超えると電流を流し、出力電圧を一定に保つという基本動作は、ツェナーダイオードと類似しています。 しかし、ツェナーダイオードは自身に流れる電流によって降伏電圧が変動する特性があります。それに対し、シャント電圧リファレンスは内蔵の誤差増幅器が常に電圧を監視・制御しています。これにより電圧変動を抑え込むことができるため、ツェナーダイオードよりも高精度のVOUTを出力することが可能です。
3. エイブリックのシャント電圧リファレンスを試してみる
エイブリックのシャント電圧リファレンスは、車載用として業界最高*の出力電圧精度 ±0.1%、業界最小*の出力電圧温度係数 20ppm/°C、低出力ノイズ 28μVRMS (出力電圧 = 2.048V時) を実現しています。
過酷な温度環境でも高精度の基準電圧を出力することが可能なので、電子機器やセンサ機器の基準として読み取り精度向上に貢献します。また低出力ノイズや、大電流対応によりシステム設計の簡素化と総合的なコスト削減が可能になります。
*2026年2月現在当社調べ
| S-19760 | 出力電圧精度 ±0.1% 出力電圧温度係数 20ppm/°C 最大シャント電流 15mA | ||
| S-19761 | 出力電圧精度 ±0.1% 出力電圧温度係数 20ppm/°C 最大シャント電流 30mA |